進化について行けない船橋の料理感では、今もてはやされている料理の多くは、アミューズ•ギョルの延長にしか映りません。 自分にとっての一皿は、一つの皿の中でいくつかの楽しみ方が出来る料理を言います(パナシェ[盛り合せ]とは違います)。 主材料とソースに付け合わせが組み合わせや単独で様々に変化をする、ある意味アバウトな料理がフランス料理(=一皿)です。 皿の中での食べ方が限定されてしまう料理はアミューズギョルの延長料理と成ります。 [*勘違いして頂きたくない事は、レストランやビストロで食べる家庭料理的一皿(地方料理も含む)を言ってはいません。 あくまでも、エトワレーのレストランで出される料理の話しです。*] 料理の量が多くても、皿の中での遊び(アミューズ)がなく、口の中(ギョル又はブーシュ)だけの楽しみの料理は、船橋的料理感ではパリ料理(=アミューズ•ギョル)です。
「アミューズ•ギョルVSアミューズ•ブーシュ、そしてアペリティフ。」
船橋がアミューズ•ギョルと言う言葉に最初に出会ったのは、辻調のフランス料理史の授業で坂東先生からでした。 最近の料理傾向(1978年頃)と言うタイトルだったと思いますが、アラン•シャペル氏の店で、注文してから料理が出てくる前の時間潰しに、アミューズ•ギョルと言って二皿出てきた。 数年前から三ツ星レストランではアペリティフの後に、小さな料理をアミューズと言って出すところが多くなっている、的な内容だったと思います。 勿論、当時はこの授業内容は理解は出来ず、単語だけを鵜呑み状態、消化不良してました。
実際に船橋がアミューズ•ギョルとアペリティフに触れ悩まされる様に成ったのは、その授業から3年後の事でした。 それからタイユヴァンで働くまでの4年間、アペリティフとアミューズ•ギョルの違いが理解出来ていませんでした。 日本で一般的にアペリティフと言うと食前酒と思ってしまいます。 確かに食前の飲物もアペリティフですが、「食事の前に食欲を促進させる事全体」を指す方が、フランスでの会話としては多く使われます。 ですから、食前酒と一緒に出される“当て”もアペリティフの一部です(当てだけはプティ•サレーと呼ばれる方が多いです)。 船橋が働いていた当時のタイユヴァンでの具体例では、料理やワインを食前酒を飲みながら決める時にグジェールが出てきます、これがアペリティフです。 その後、料理が決りそれらが下げられてから、注文した料理が出てくる前に出てくるのがアミューズ•ギョルです。 タイユヴァンでは4回食事をしましたが、アペリティフは常にグジュールで、アミューズ•ギョルは毎回違う料理が出てきていました。 バックヤードでは、営業前に来店人数分のアミューズ•ギョルを盛りつけ準備をしておきます。 そしてお客様にお出しする直前に、確認されて運ばれて行きます。 当時は他の高級レストランも、こんな感じでした。
アミューズ•ブーシュと言う単語に出会ったのは1987年にラ•プーラルド(当時二ツ星)で働いた時でした。 一口で食べられる大きさの料理が三品、注文された料理の前に全員に出されました。 アミューズ•ギョルと言ったら、ブーシュだと言い直されました。 同じ口を表す単語でも、ギョルとブーシュでは大きな違いがあります。 ブーシュは上品です。 はじめは「気取ってブーシュなんて言っちゃって、田舎の店のくせに。」と思っていました。 なぜなら、誰に聞いても明確にアミューズ•ギョルとアミューズ•ブーシュの違いを答えてもらえなかったからです。 ラ•プーラルドで半年が過ぎ、少しはフランス語で会話が出来るように成ったある日、ランドワン氏(エテオクル氏[パトロン•シェフ、M.O.F]の義父、船橋のトロワグロのスタジエをお膳立てしてくれた)と仕事をしていた時、アミューズ•ギョルとブーシュの違いを質問してみました。 さすがはローヌアルプ地区にランドワン氏有りと言われたシェフ(既にリタイヤしていましたが)。 あくまでも氏の考えだがとの前置きがあった後、アミューズ•ブーシュは一口で食べられる大きさで作り、上品に食べれる。 アペリティフとしても出せる、逆に言えば、アペリティフの品数を増やせばアミューズ•ブーシュとしても言える。 アミューズ•ギョルは「待ち時間を紛らわす小さな料理」で、2〜3口で食べれる量(ギョル[=卑しい口]、だったら一口で行ける)。 とズバッと言い切られました。 これは当時の船橋にとって、物凄く良く理解が出来る解説で、その後働いた店々では、この事を頭に置きアミューズを作っていました。 今もランドワン氏の説を自分の基本としています。